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【サッカーダイジェスト|現役の眼】驚かされたタジキスタンの闘う姿勢。“緊張感”を欠いたままなら日本の最終予選は…

日本をリスペクトしすぎず、自分たちを信じて

タジキスタンが予想外の大健闘を見せ、ゲームは終始引き締まった内容に。最後までゴールを狙い続けた彼らに対して森保ジャパンは……。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

埼玉スタジアムでのモンゴル戦大勝を受けて、日本代表はタジキスタンとのアウェーゲームに臨みました。

 スタジアムは独特の雰囲気で、そこに加えて人工芝のピッチという環境。日本の選手たちがどれだけ早くそこに馴染んでプレーできるのかに注目しました。

 試合前の注目点は環境面でしたが、キックオフされて一番驚かされたのは、タジキスタンの闘う姿勢でした。格上の日本に対して、最終ラインからどんどんパスを繋いでくる。たとえディフェンスを背負っていてもボールを預けて、すぐにフォローに入る。前線からの連動した守備を続けて、中盤でバスカットをすれば、日本の裏へのボールには素早く最終ラインを下げて対応し、跳ね返したボールもきっちり回収していました。

 球際でボールを何度か奪われても、チャレンジし続けていましたね。日本をリスペクトしすぎず、自分たちを信じ、味方のポジションを信じてプレーする姿勢を貫いていました。スコアが0-3になって敗色濃厚となるなかでも、攻めのスタンスを崩さなかったのは見上げたものです。タジキスタンがそうした戦法で挑んできたからこそ、日本はカウンターからチャンスを作る機会が多くあったと思います。

もしかするとアジア2次予選では最大の敵になりうる相手から、日本が確実に勝ちに繋げられたポイントは、3点あります。

 まず1点目は、幅を広げてサイドチェンジを多く利用した攻撃にあります。

 相手チームのコンパクトな陣形は、守備のスライドも速く、隙をなかなか与えてくれませんでした。そのような守備に対しても、前半は吉田麻也選手から長い斜めのロングボールが酒井宏樹選手に何度が通されていました。素早いスライドのためチャンスになりにくいことが多かったですが、その攻撃により、中央突破を仕掛けるスペースも生まれたように思います。

 逆サイドの中島翔哉選手のクロスからの先制アシストと、幅を広げて攻撃したことで決定機が生まれ、得点に至ったのだと考えます。

貪欲ではあったけど、「取るぞ!」という心意気が感じられなかった

2点目は、勝負所を心得た試合運びの巧みさです。

 タジキスタンは何度も日本ゴールに襲いかかり、決定的なチャンスを創出していました。なかでも前半(23分)の最大のピンチは冷や汗ものでしたが、GK権田修一選手がその安定感と落ち着き払ったセーブで、見事に止めてくれました。その後もやられそうな雰囲気はありましたが、再三相手のシュートをしっかりキャッチして、攻撃のリズムを寸断することに成功していました。

 日本も前半は決定機を決め切れませんでしたが、後半立ち上がりの早い時間帯に一気に2得点したあたりは流石でした。あれによってゲーム自体のコントロールが容易くなりました。

 3点目は、ゴール前の質の差。

 南野拓実選手の2ゴールはともにクロスからのゴールでしたが、受け手の動きの質、クロスの質がきわめて高かったです。相手マークから離れて受ける南野選手の動き、そこに合わせる中島選手のクロス。酒井宏樹選手のグラウンダーのクロスに対して、スペースにスピードを損なわずに飛び込むタイミングとシュート技術。まるで攻撃のパターン練習のようでしたが、それを実際の公式戦でやってしまうクオリティーの高さで、タジキスタンとの差を見せつけたと思います。

 てこずっていた人工芝にも馴染み、徐々にいいテンポでボールが回るようになっていました。正確にトラップもできるようになっていましたし、しっかり試合の中で修正していけるのは、やはり個々が海外で積んだ経験の賜物でしょう。イレギュラーな環境下でプレーしてきたからこそ、ああした場面で力を発揮できるのだと改めて感じました。

 最後に──。

 負けている中でも必死に1点を取ろうとチャレンジするタジキスタンに対して、日本はゲームの終盤にかけて多くのチャンスを掴みましたが、結果的には浅野拓磨選手の1得点に終わりました。

 たしかに選手たちから得点への貪欲さは感じられましたが、決定機になったときの緊張感、「取るぞ!」という心意気は最初の2得点、そして浅野選手のゴールまでしか感じられませんでした。大半が、緊張感のあるシュートのように見えなかったのが残念です。

したたかさを2次予選の間に身につけておきたい

スペースや時間がありすぎて、枠を外してしまったのかもしれません。「こんなチャンスはない!」というほどのチャンスがたくさんありましたから。でも、ゴールは挙げられなかった。

 相手チームの最後の詰めの甘さがあったから良かったものの、きっちり落ち着いて決める能力がある選手がタジキスタンにいたなら、正直試合展開は分からなかったと思います。

 日本は世界で戦うレベルにあると思います。でも、アジア予選を勝ち抜かないと世界とは戦えません。

 そのあたりのしたたかさを2次予選の間に身につけておかないと、最終予選ではなにが起きるか分からない。そのための準備もしっかりしていってもらいたいと感じさせる、タジキスタン戦でした。


<了>

橋本英郎(はしもと・ひでお)


PROFILE
はしもと・ひでお/1979年5月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、長野パルセイロ、東京ヴェルディでプレーし、今季からJFLのFC今治に籍を置く。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場した。現役プロ選手として奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中。Jリーグ通算/438試合・21得点(うちJ1は339試合・19得点)。173センチ・68キロ。血液型O型。

この記事について:サッカーダイジェストWEBより転載
https://www.soccerdigestweb.com/tag_list/tag_search=1&tag_id=217

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