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【サッカーダイジェスト|現役の眼】格下相手に“適したプレー”がハマった。日本代表に注文をつけるなら「セットプレーの質」と「時間の使い方」

中島の先制点が布石になって、2点目が生まれた

限られた出場時間で溌溂とプレーした久保。10月のモンゴル戦で代表初得点をマークできるか。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

カタール・ワールドカップ出場に向けて、アジア予選が始まりましたね。今回は日本代表にとって初戦となった、ミャンマー戦について書きたいと思います。

 試合の前に考えたポイントとしては、2つ。

①初戦のアウェー戦
②格下相手にどう戦うのか

 でした。

 ①のポイントは、結果として勝利したことで、予選を戦っていく上で優位に進んでいくでしょう。アウェーゲームではやはり、難しい試合が多々あります、日本のホームで戦うときとは比べものにならないくらい、対戦相手の闘争心が尋常ではありませんから。

 ②のポイントについては、細かく3つに分けて見ていきたいと思います。

 まず1つ目。どのようにして勝つためにゴールを奪うか。

 先ほども書きましたが、アウェーゲームで格下が相手となると、試合は非常に難しくなります。以前までの代表戦ではなかなか点が取れずに引き分けてしまったり、後半残りわずかな時間で辛くも得点を挙げて勝利した、というケースが少なくなかったですよね。

 その点で見れば、今回は前半のうちに2得点を挙げられた。しかもミドルシュートで1点目が決まるというのは、過去のアジア予選ではなかった形ではないでしょうか。

 ミャンマー戦においては、強引なシュートやクロスの本数自体を上げること(精度より数)に注力していたように感じます。いままでとは異なり、格下相手のゲームに適したプレーが上手くハマりました。

森保一監督が就任してから、選手個々のシュートへの意識の高さを強く感じます。一方で、シュートより周りの選手を活かすプレー選択がもっとできれば、と思うシーンがあったのもたしかです。ただ昨日の試合では先制点がミドルシュートから、2点目もミドルシュートのこぼれ球を拾ってからのクロス→ヘディングシュートでした。

 南野拓実選手の2点目などは、ミドルシュートの脅威を感じているため、相手選手が完全にボールウォッチャーになっていましたね。堂安律選手の周りにこぞってプレッシャーを掛けに行ったのです。冷静に空いているゾーンを見つけてアシストした堂安選手は、見事だったと思います。中島翔哉選手の先制ゴールが布石になって生まれた2点目だと思います。

苛立っていたミャンマー。怪我をするんじゃないかとヒヤヒヤ

もんどりうってピッチに倒れる吉田。ミャンマーのラフプレーにも日本の選手たちは巧みに対処したと、橋本は評価する。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

2つ目は、攻撃に手詰まり感が出た後半と、時間の使い方について。

 今回は早い段階で2得点できましたが、点が取れない場合や点を取るためのポイントとなるキープレーは、セットプレーだと思っていました。

 普通に攻めている部分に関しては、やはり時間とともに相手も慣れてきます。でもセットプレーは違う。いろいろな変化をもたらせますし、身長の高い選手にヘディングの競り合いからゴールを狙わせたりもできる。ミャンマーの選手は全体的に大きくありません。キッカーとシュートを撃つゴール前の選手がしっかり合わせられれば、得点は難しくないと考えていました。

 火曜日の試合では、コーナーキックやフリーキックの機会がたくさんありました。でも、得点には結びつけられませんでした。これは今後に向けて、大きな反省材料になると思います。

 試合展開が苦しいときにセットプレーから点を取れると、状況を一変させることができます。ロシア・ワールドカップのコロンビア戦がそうだったでしょう。相手選手が10人になってなかなか崩せずにいましたが、コーナーキックから大迫勇也選手がヘディングを決めて、勝つことができました。

 セットプレーの大切さをより感じ、より追求していく必要があると、ミャンマー戦を通じてあらためて感じました。

 また、時間の使い方、試合のリズムに変化を加えるといったところもあまり見られませんでした。単調と言ってしまえば短絡的ですが、普段サッカーを見慣れていないひとからすれば、なんとなく時間が流れているように感じたのではないでしょうか。「ミャンマーの選手頑張っているなぁ」くらいの感想を持つ試合展開でしたので、もう少し緩急をつけられたら良かったのにな、と思いました。

 後半のミャンマーは、ディフェンスラインをグッと押し上げて積極的にボールを取りにきました。それに対しては上手くいなせていましたが、逆に攻撃のテンポを上げられてしまうシーンもあり、厚みのある攻撃がしにくくなっているように映りました。また、それによって試合のペースをコントロールしにくくなっているようにも感じました。

 追加点を挙げられたらこのようには感じなかったのかもしれません。時間の使い方を意識して、ゲームに緩急をつけて展開してもらえると、応援しているサポーターの方々も楽しめますし、ミャンマーはきっとその変化についてこられなくなったのではないか、と思いました。

最後の3つ目は、やはり怪我のリスクです。

 前半に2失点してから、明らかにミャンマーの選手は苛立っていました。なぜなら守って、守ってワンチャンスを狙っていたからです。1失点ならチャンスはあるけど、2失点となると穏やかではいられない。イライラがプレーにもしっかり表われていました。

 日本の選手の足ごとかっさらうようにアプローチしたシーンもありましたね。怪我をするんじゃないかとヒヤヒヤして見守っていました。

 でも、いまは海外でプレーしている選手が増えたためか、そのあたりの対応や、パスやドリブルに対して遅れて蹴ってくる場合、あるいはファウル覚悟で仕掛けてくるタックルに対して、上手く危険な部位を守りながら、ファウルを誘っていたように感じます。

 セットプレーの流れで吉田麻也選手が接触で脇腹を傷めたシーンがありましたが、あれはPKでもおかしくなかったですね。しかしながらアジア、とりわけ格下相手のアウェーゲームでは、なかなかホイッスルを吹いてもらえません。

 身を守りながら、結果を出す。この点は全選手が意識していたように感じました。

 以上、3つの視点から分析させてもらいました。収穫もあれば課題も見つかり、次に繋がる試合だったと僕は考えます。

殿堂入りのおふた方でも果たせなかった“世界8強”を

火曜日、日本サッカー殿堂の掲額式典に臨んだ岡田氏(右)。タイ代表指揮で欠席した西野氏とともに、橋本が薫陶を受けた恩師である。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

話は変わりますが、ミャンマー戦の前に、日本サッカー殿堂の掲額式典が開かれましたね。西野朗さん、岡田武史さん、佐々木則夫さんが選ばれました。殿堂入り、本当におめでとうございます!

 とくに自分が師事したふたりの監督、西野さんと岡田さんが早くも殿堂入り。あらためて僕は、どれだけ指導者に恵まれて進んできたんだと実感しました。

 日本代表の次戦は、ホームでモンゴル戦(10月10日)になります。今回のようにどんどんシュートを撃ち込んで、久保建英選手や鈴木武蔵選手、橋本拳人選手などなど、代表初得点がたくさん生まれるようなゴールラッシュを見たいですね! 殿堂入りした西野さん、岡田さんでも果たせなかった“世界8強入り”を意識して、これからも戦ってほしいです。

<了>

橋本英郎

PROFILE
はしもと・ひでお/1979年5月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、長野パルセイロ、東京ヴェルディでプレーし、今季からJFLのFC今治に籍を置く。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場した。現役プロ選手として奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中。Jリーグ通算/438試合・21得点(うちJ1は339試合・19得点)。173センチ・68キロ。血液型O型。

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