コラム 2020.05.15 【サッカーダイジェスト|現役の眼】橋本英郎が選ぶJ歴代ベスト11「対戦したから分かる“衝撃を受けた11人”! すべてで圧倒されたのは…」 福西さんは“やらしく”光っていました 赤く囲っているのが「MY BEST PLAYER」。橋本は「キャプテン兼務」で同級生の小笠原氏を選んだ。(C)SOCCER DIGEST 今回は僕が実際に対戦した経験から、Jリーグの歴代ベストイレブンを絞り込んでみたいと思います。新旧のチームメイトはすべて対象外にして、日本代表でも「一緒にプレーしていない選手」を選出条件にしました。 フォーメーションは3-5-2です。 まず、ゴールキーパーは東口順昭選手です。これまでいろんなキーパーと対戦したり観たりしてきましたが、入ったと思ったシュートをかなりの確率で止めていますよね。僕自身も「これは行った!」と思ったシュートをキャッチされて……、あれは衝撃でした。ガンバが勝利を掴めるのは、彼が堅実なセービングを披露しているからだと思います。 ディフェンスラインは、3枚。右から大岩剛さん、イリヤン・ストヤノフさん、そして松田直樹さんの並びです。 大岩さんは、グランパスの時に対戦した際の印象が強い。まさに「ゴールを守る壁がいる!」って感じたのが衝撃的でした。「これがプロのセンターバックなのか」と実感した存在でもあります。 攻撃にアクセントを付けられるリベロの名手がストヤノフさん。ジェフとの試合で、最終ラインからの持ち上がりでスルーパスを出され、失点したのを鮮明に覚えています。2005年シーズンのホーム最終戦(ガンバが1-2でジェフに敗れた)です。優勝争いをしている最中、ビックリするようなパスを通されました。 松田さんも大岩さんと同じく、「壁」と感じた選手。ガンバが強くなかった頃に「マリノスとは『格が違う』」と言われた記事を見て悔しく感じたのと同時に、正直そうだなぁとも思いました。そこからなんとか、マリノスに勝てるチームになりたいと頑張ったのを覚えています。 5人の中盤は、右に山田暢久さん、左に三都主アレサンドロさん、2ボランチに福西崇史さんと山田卓也さん、そしてトップ下が小笠原満男さんです。 山田暢さんは、文字通りのオールマイティー・プレーヤーで、自分が苦手とする超人的な身体能力の持ち主でした。対戦していてもカバーリングの速さや読み、技術とすべてで上回られている感覚がありました。 それは、山田卓さんも同じ。ヴェルディが安定している時は、たいてい山田さんが局面、局面で顔を出してきて、突破できなかったのをよく覚えています。福西さんは、さばき役のボランチのようで、実は攻撃参加した時の破壊力が凄まじい。「攻撃に来てる!」と分かっていても止められなかったことをすごく覚えています。強かったジュビロでは他の選手がより目立っていましたが、ポイント、ポイントでは“やらしく”光っていました。 PKになるかもと思いながら手で力強く押したけど… 規格外のストライカーだったワシントン氏。橋本は仰天エピソードを明かした。写真:早草紀子 三都主さんは、エスパルス時代に何度も「ウイングバック対決」をした相手です。 その際、縦に抜かれたくないから行かせないようにしていたら、中に切り込んで、気づけば結局縦に突破されていました。彼もまた衝撃的でしたね。近づいてボールを受けにくくするとワンツーでかわしてくるし、どう止めたらいいのか、当時の僕には理解不能でした。 小笠原さんは、僕のガンバ時代によくマッチアップしました。彼がトップ下でスルーパスを出す瞬間、自分のアプローチの速度は十分だったと思っていたにも関わらず、ロングスルーパスを出されて得点につなげられたことがあります。そのパスの弾道を彼の真横で見ていたのを、鮮明に覚えています。「あぁ、これくらいのプレッシャーじゃ彼にはなにも感じさせられなかったんだなぁ」と、当時の自分の力不足を嘆いていました。 さて最後は、2トップですね。こちらはワシントンさんと中山雅史さんです。 中山さんはジュビロの黄金の中盤が織りなす攻撃で、最後の仕上げ(ゴールを決める)を担う人物でした。周りのボール扱いの巧さに比べると特別高くはなかったですが、ゴールを奪うことに関しては突き抜けていました。なんやかんやでけっこう点を取られた印象が強く残っています。試合中、中盤の選手から暴言を受けながらも文句を言わず、やり切り、そしてゴールを奪う。あのメンタル……、本当にスペシャルなストライカーですね。 最後は、ワシントンさん。右サイドバックを何度かしている時に対峙しました。レッズの選手たちは「ヘディングが強くない」と言っていましたが、僕からしたら身体の厚みがありすぎて、背後から勝てる形になれるとは到底思えませんでした。対戦した試合では左サイドから送られたクロスに対して、PKになるかもと思いながら手で力強く押したんですが、彼はビクともせず。そのまま何事もなかったかのように、ヘディングでゴールを決められました。 以上の11人です。独断と偏見で選ばせてもらいましたが、いかがでしたでしょうか。 健太さんは「勝たせる監督」 長谷川監督をベストに選出。ガンバを三冠に導いた手腕を称える。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部) メンバー構成としてはバランスを重視したので、中央突破型のチームではありません。手堅く守り、前線でのキープからサイド攻撃。あとはセットプレーですね。「おもんない試合やなぁ」と思わせつつも、かならず勝って終わるチームになると思います。 監督は、長谷川健太さん。勝たせる監督だと、僕は思っているからです。ガンバで三冠を獲ったのはやっぱりすごいことだと思います。西野ガンバのスタイルから、タイトルを獲る、勝ち切る力強さを植え付けた監督だと見ています。 マイベストプレーヤー兼キャプテンとして推したいのが、同級生の小笠原さん。この癖のあるメンバーをまとめ上げて、常勝軍団に仕上げる力を持っていると、そう信じています。 この11人みんなの全盛時のプレーを掛け合わせたら──。そうとう強烈なチームになるんじゃないでしょうか。 <了> 橋本英郎 PROFILE はしもと・ひでお/1979年5月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、長野パルセイロ、東京ヴェルディでプレー。昨季からJFLのFC今治に籍を置き、見事チームをJ3昇格に導く立役者のひとりとなった。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場した。現在はJリーガーとして奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中。Jリーグ通算/438試合・21得点(うちJ1は339試合・19得点)。173センチ・68キロ。血液型O型。 この記事について:サッカーダイジェストWEBより転載 https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=73092 前の記事へ 一覧へ 次の記事へ 関連の記事 コラム 2017.07.19 【現役の眼】元日本代表MF、橋本英郎が指南する「巧いボランチの見極め方」 コラム 2019.10.07 【10/27】成長期に多いケガの予防と対策講習会 コラム 2017.09.14 【現役の眼】元日本代表MF、橋本英郎が考察する「プロになれる選手、なれない選手」