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【現役の眼】橋本英郎がブラジル戦を見て考えた「日本はどうすれば強豪国に勝てるのか」

写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)


みなさん、こんにちは。今回はロシア・ワールドカップの優勝候補にも挙がるブラジル代表と日本代表の一戦について書きたいと思います。

日本人は、やっぱりブラジルのサッカーが好きですね。ヨーロッパのベーシックな雰囲気のサッカーより、スペインやブラジルなどラテン系サッカーが好みなのだとあらためて感じさせる内容でした。パス、ドリブルなど、攻撃の要素をふんだんに織り交ぜた展開。ブラジル側からすれば、楽しく落ち着いて見られた試合ではなかったでしょうか。

結論から言うと、ブラジルとの差は圧倒的でした。なにが違うのか。すべてと言ってしまえばそれまでなんですが、いくつか「通用するようにできるかもしれない」と思われる点を含め、考えてみたいと思います。

まず、この試合のアプローチです。前線からプレスに行くべきなのか、それとも相手が強豪なので引いて守るのか、その決断をしなくてはいけません。ブラジル戦で日本が取ったのは、前線からプレスを掛けるけど、掛ける選手とポイントは絞る、といったものでした。

ブラジルの両サイドバック、マルセロ選手とダニーロ選手、とりわけ左のマルセロ選手にボールを出させたがっていました。なぜなら、その前にいるのがネイマール選手だったからです。

相手の右サイドから展開されて、左ウイングに位置するネイマール選手に前を向いた形でボールを受けられると、向かい合う酒井宏樹選手が不利な状況で1対1をしなくてはなりません。そうさせないため、また、相手が攻撃するサイドを限定させることで守備の連動性を出していく。狙いはそこにあったように感じました。

この作戦自体は、まったく問題ないと思われます。最終予選のオーストラリア戦(ホームで2-0勝利)で見せたのと同じ戦い方がベースにあったので、ピッチの選手たちもスムーズにできるはずでした。

しかしブラジルは日本の出方をうかがいつつ、ハメに来たところ、その苦しい局面でウィリアン選手とネイマール選手が打開を図ってきました。体勢としては明らかに不利。日本の選手がピッタリとマークで背中についてましたから。それでも、高い技術と判断で突破されてしまったわけです。

ピッチで戦っている選手にしてみれば、プランが壊れかけている感覚があったと思います。そのため、解説者の方々も日本選手が疲れているように感じ、実際にそうコメントしていました。疲れというよりも、安易にプラン通り動き出せなくなったのではないでしょうか。しっかり出方を見極められ、力で凌駕されてしまったからです。途中、盛り返せそうなタイミングはありましたが、ブラジルの鋭いカウンターがあるから、失点のリスクを冒せない。前半はなかなか形を取り戻せませんでしたね。

 

写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 

見るべきはやはり、この前半の戦いだったと思います。後半は相手が少し流す感じになっていたので、フォーカスすべきは明らかに前半。いくつかポイントがありました。

ゲームを決めてしまった大きなポイントは4つ。

まず1点は、スピード感覚。これは相手が日本をしっかりリスペクトしてくれたからこそ生まれたものだと思います。日本のボールの寄せが早い。それによって相手選手のテンポも判断もスピードアップしました。

日本はふたりでボールを取りにいったりもしましたが、ブラジルの選手たちは不利になりそうになると上手くワンツーで突破したり、フリックをして3人目の動きなどを活用していました。このプレーの速さと考える判断の早さ。いままでの対戦相手では体験できなかった代物だと思います。

寄せの早い井手口陽介選手がネイマール選手の足を蹴ってしまうシーンが何度かありました。油断しているようで、寄せに合わせてすぐに相手の届かないところにボールを動かし、次の動きに入っていたのです。そのため井手口選手はボールに触れず、足を蹴ってしまった。

2点目は、プレッシャーに対する感覚の違い。これは強豪国と対戦する時は、何度も起こり得る事象だと思います。日本の選手は相手守備のレンジを広く感じていた。一見積極的に回しているようで、チャレンジするようなボール回しはなかなかできていませんでした。

かたやブラジルは、日本の選手に激しいプレッシャーを掛けられている選手に対しても、普通にパスを出していました。どのポジションの選手にもその傾向がありましたね。だから日本はハイプレスでボールを奪えたりもしたわけですが、先ほど言ったように、ウィリアン選手とネイマール選手にその網を一度突破されてしまうと、取り返しのつかない致命的なカウンターを食らっていました。

プレッシャーをプレッシャーと受け止めていない。相手にとって脅威となる攻撃的な選択ができる。ブラジルのような強豪国の選手が持っている感覚です。

3点目は、「技術」の部分です。簡単に技術と書いてしまえばなんだかよく分からなくなるので、細かく3つに分けます。

ひとつは、パスの強弱。スペースに出すボール。足下でワンツーをさせるためのパス。ロングパスだけどあまり高く上がらないサイドチェンジ。ブラジルには意図のあるパスが多数ありました。まったく意味を持たないパスもあるのですが、それがまた、意図するパスを際立たせている。選手間の距離を取らないパス交換などは本来必要ないと思われますが、それでもボールは動きます。1か所に留めおかず、ボールを常に動かすことで、日本に気をおく時間を与えなかったのです。

2つ目は、ボールを受けた次の選手に、選択肢を考える時間を作る技術です。パスもですが、ドリブルであえて相手選手を引きつけ、次に受けた選手が余裕を持って判断できる時間を創出する。小さな局面で複数の人数を掛けて日本はボールを取りにいっていましたが、ダイレクトパスやマークを背負った選手がブロックするなど、ブラジルの選手たちは早いテンポで局面を脱していました。

3つ目は、剥がす力です。何度も述べてきましたが、背負っている選手がボールを持つのはあまりいい状況ではありません。でもブラジルの選手たちはマークに来ている選手一枚を剥がすことを嫌がりませんでした。そのため、本来日本のプレッシャーを嫌がり、次の選手が苦しい状況でボールを受けることが多くなるはずが、そうはならなかったのです。後半はその部分で、ブラジルは上手くいってなかったように思います。なぜなら剥がすことはできても、それを受けて、周りの選手があまり連動性を持って動けていなかったからです。

試合全体を見ても、立ち上がりのビデオ判定によってプランが崩れてしまったように映りました、基本的には親善試合なわけで、気持ちの切り替えは可能だったと思います。

しかしチャレンジをしようにもつねに凌駕された。日本は自身の積極的な守備を、しっかりブラジルに見られているという感覚を味わったのではないでしょうか。これはなかなか経験できるものではないでしょう。

では日本はどうすれば、ブラジルのような強豪国と戦って、勝つことができるのか。僕が考えるポイントは4つです。これだけでは足りないかもしれませんが、以下に挙げる点を意識して向上させるだけでも、かなり変わるのではないかと思います。

まず1点は、無駄なボールタッチを減らす。ドリブルの際は問題ないのですが、ドリブルに入る前のトラップでタッチ回数を増やさないことです。止めたい場所にしっかり止めて、動きにスムーズさを出す。これで相手のフィジカル的なスピード感にも付いていけるようになると思います。

1回で止めるのを2回、3回と触ってから次のプレーに移るのではなく、1回で行なう。ダイレクトパスも次の受け手を考えて出してあげる。パスの質で次の選手に少しずつですが、時間をプレゼントできると思います。

2点目は、タッチの回数やドリブルの緩急で、相手がしてくると思わないようなプレーを続けざまに繰り出す。ダイレクトパスをしてくるなと思わせて、あえて2タッチする。ドリブルで仕掛けてこないなというタイミングで仕掛けて、相手の注意を集め、次の選手に時間をプレゼントする。

ブラジル戦ではこれが奏功したシーンがありましたね。後半アディショナルタイムのビッグチャンスです。酒井宏樹選手が後方からのロングパスをダイレクトで森岡亮太選手に落とした。森岡選手はフリーだったので誰もが止めたらいいと思いましたが、彼もダイレクトで酒井選手にワンツーのパスを出しました。相手選手も酒井選手も、そのタイミングで来るとは思ってなかったでしょう。結果的に、パスのスペースへの強さと転がした距離が絶妙だったため、センターバックもカバーにいけない完璧な崩しの形になりました。

時間をプレゼントされて右サイドをえぐった酒井選手は、シュートの打ち手を確認してクロスを上げれました。中央の乾貴士選手は余裕を持ち、視野の取れた角度からゴール前に入っていましたが、浅野拓磨選手は後方視野の確保(ゴール前に入っていく際味方ポジション確認の首振り)がしっかりできていなかった。酒井選手はどちらが合わせてもいいように折り返した(どちらかと言うと乾選手に向けて)と思いますが、そのマイナスのクロスは浅野選手の元へ。急に決定的な形になったことで余裕がなく、無理な体勢でシュートチャレンジしてしまいました。

 

写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)



3点目は、順目でプレーするときは全体の流れ、狙いに連動して動く、です。

先述の決定的なシーンがひとつのヒントになるでしょう。最後の局面だけを切り取ってみれば、誰もが酒井選手がセンタリングを上げると分かりましたが、実際にはブラジルは対応がしっかり取れていない。このような連動性があれば、相手より速さのある攻撃が出せる可能性が高まるのです。よくパターンのシュート練習をすると思いますが、それと同じ要領です。

型にハマったときの流れるようなスピード感には、精度を加えやすい。つまり、相手が分かっていても止められない攻撃ができます。この状況では、相手がびっくりするようなプレーはいらないかもしれません。なぜならその前に、森岡選手が相手の虚を衝いていて、その必要性がなくなっていたからです。

4点目は、セットプレーです。正直、以前のようにスペシャルなキッカーがいまの代表にはいませんが、それでも吉田麻也選手のFKがポストを叩き、井手口選手のCKから槙野智章選手がゴールを決めました。終了間際にはオフサイドの判定でノーゴールになりましたが、乾選手のリスタートから杉本健勇選手がヘディングでネット揺らしています。

キッカーに一定水準のレベルがあり、ある程度の高さがあれば、強豪からでもゴールを奪える。その事実を証明してくれました。あとはトリックプレーなどでよりバリエーションを増やし、精度を高められれば面白くなってくると思います。日本サッカーを向上させる意味でも、育成年代からセットプレーの重要性を理解させる必要があるかもしれません。

日本が喫した3失点のうちふたつは、PKとこぼれのクリアミスからのミドルシュート。そのような形でも先制点、追加点を取られるとゲームが決まってしまう。そこに怖さがあります。どんな形で取ったゴールも1点は1点。そのことをあらためて理解し、ワールドカップに臨まなければならないと感じさせるゲームでした。

<了>


橋本英郎

サッカーダイジェストWEBより転載
http://www.soccerdigestweb.com/news/detail4/id=32438

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