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【現役の眼】元日本代表MF、橋本英郎が解き明かす「流行する3-4-2-1の狙いと効きめ」

(C)SOCCER DIGEST


今回はフォーメーションについて書いてみようと思います。

11人をフィールド全体にどのように配置して試合をするか。それを考えて組み立てるのがフォーメーションです。攻め方、守り方に大きく影響するものだと思います。

フォーメーションは、その時代に応じて毎年のように変化していっています。あと、国やクラブによっては、年々変化していくフォーメーションの中でも不変な基準として用いられている場合もあります。オランダやスペイン、そしてクラブでは、鹿島アントラーズやレアル・マドリーなどです。

そんな中で今回、ひとつのフォーメーションを中心に考えてみます。あくまで個人的な見解で、上手く説明し切れていない部分があるかもしれませんし、最新情報がアップデートされていない場合があるかもしれません。ご了承ください。

現在Jリーグでは、「3-4-2-1」のフォーメーションを使っているチームが多く見受けられます。例えばJ1だと、ヴァンフォーレ甲府、(浦和レッズ、サンフレッチェ広島)。J2だと一気に増えて、大分トリニータ、ロアッソ熊本、V・ファーレン長崎、アビスパ福岡、愛媛FC、徳島ヴォルティス、ファジアーノ岡山、松本山雅、ザスパクサツ群馬、モンテディオ山形。ほかの形と併用しているクラブとしては、セレッソ大阪、ガンバ大阪、東京ヴェルディも活用しています。

以前使用していたチームとしては、広島と浦和になりますね。なので、カッコ付けで表現させていただきました。

J1にはあんまり多くないですが、一時期の結果として考えると、広島がリーグ連覇した際のフォーメーションであり、また、浦和の強さが際立つ時期もありました。

なぜこのフォーメーションがJリーグで多く採用されているのか、重宝されているのか。理由は大きく分けて3つあると思います。

まずはひとつ目。Jリーグでこのフォーメーションが流行ったのは、先述の広島と浦和の2クラブによるところが大きいと考えています。

広島は、結果的にJ2に降格する年(2007年)からこのフォーメーションを採用していました。採用した当初は、自陣で相手にボールを取られてそのまま簡単にゴールされることが多く、その影響でJ2に落ちてしまいました。

しかしJ2では無類の強さを見せ、勝点を100も積み上げて昇格しました、その後そのままJ1でも圧倒的な力を示しましたが、なかなかタイトルまでは届かなかったところを森保一監督が整備して、毎年のように覇権争いを繰り広げて、いくつかのタイトルを獲りました。

その広島の土台を作り上げたミハイロ・ペトロビッチ監督が浦和を率いることになり、一時期の低迷から脱し、優勝戦線に復活。そして2016年にはルヴァンカップ制覇を果たしました。

Jリーグのトップを走り、結果を残しているチームのサッカーをモデルに、他のJクラブが積極的に採用していった。そう考えるのが自然な流れだと思います。

2点目は、より多くの選手で守りを固められる、守備重視の布陣ということです。J2での採用クラブが急増したのは、まさにこのポイントが大きな理由だと思っています。

守備時は、本来3人のセンターバックで守るところを4人の中盤の両サイド(ウイングバック)がサイドバックのような位置まで、ポジションを下げて守ります。そのため、守備時は5バックだと見る向きが強いのです。

FW1枚を残して、中盤は2ボランチとトップ下のふたりで守り、低い位置で9人、ゴールキーパーを加えて10人で守ります。

ひとがたくさんいるので、味方同士の距離感が近くなり、当然、相手が攻めるスペースは少なくなります。ひとりの選手が突破されても、次の選手が素早くカバーできるのが特徴です。

攻撃時には、逆にディフェンスラインは3人で守るので、残りの選手で攻められ、攻撃に枚数を多く割けます。

そしてもう3つ目の理由は、「日本人の特徴に合っているから」です。

それは、体格に恵まれた選手が少なく、ポゼッションに特化しているセンターバックや、逆にポゼッションは苦手だけど、守ることだけが得意な選手がいる。勤勉に繰り返しボールにアタックでき、味方選手のために汗をかくことを厭わない──。まさにそうした点です。

これは、ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督が気づいた点でもあると思いますが、日本人の特徴であり、特長でもあると思います。

採用しているチームによって考え方に差がありますが、攻撃時には3枚のセンターバックもオーバーラップして、サイドバックのような動きをする場合があります。

逆にオーバーラップが苦手な「ザ・センターバック」な選手は、相手カウンターに備え、密着マークをしていたりします。

ここまで述べた点を考慮して、Jリーグのチームをジャンル分けしたいと思います。

3-4-2-1を攻撃的に採用しているチームを「Aパターン」、守備的に採用しているチームを「Bパターン」に分けます。

まずは、「Aパターン」。代表格が浦和になります。昨季と今季前半戦の攻撃力は目を見張るほどでした。

ポゼッション率がすこぶる高い。攻撃は最大の防御と言わんばかりにボールを保持し、いったん攻撃のスイッチが入った時の連動性は、分かっていても簡単には止められませんでした。

ほかにもこのパターンに合致するのが、徳島と大分です。

徳島は今季からスペイン人監督に代わり、新たなサッカーの構築に取り組んでいます。連動性が豊富なプレー、閃きのあるプレーが多く見られ、また、結果も付いてきているので、観ていてワクワクする強いチームになっています。

大分は、後方からのビルドアップで緩急をつけながら、急激にスピードアップしてゴールを落としにかかります。昨季J3にいたとは思えないほどで、いまや上位陣を苦しめる存在。J2のプレーオフ圏内に食い込んでいます。

「Bパターン」の代表格は、広島です。

もともとペドロビッチ監督が作り上げた攻撃的なサッカーを、森保監督が守備の改善を施すことで進化させ、Jリーグ連覇を成し遂げました。

守備時のディフェンスの人数は本当に多く、日本人の苦手とする1対1の局面のカバーを完遂していました。今季はカバーの意識が強すぎて、1対1の戦いで強さをあまり見せられず、失点数が増えてしまったのが残念でした。現在は、新監督の戦術やフォーメーションの変更により、新たなチャレンジが奏功しているように感じます。

ほかには、甲府、松本、岡山もこのパターンに分類できます。

甲府は、ディフェンスラインにザ・センターバックを並べ、引いてカウンターを仕掛けるスタイルを確立しています。日本人の勤勉さ、そして日本人が苦手とする当たりの強さを武器に守りを固めています。しかし、連動した攻撃や、閃きのあるプレーなど、攻撃時の選択肢が少ないため、なかなかゴールを挙げられなくなり、辛抱できずに敗れてしまうことが多々あります。

今年はそのスタイルが正念場を迎えているのかもしれません。なんとか降格圏から脱出して、落ちない甲府、残留争いのスペシャリストぶりを見せてほしいです。

松本も、甲府とスタイル的にはあまり変わりません。こちらはより運動量を重視して、攻撃時に両サイドのウイングが上がり、クロスを上げて得点を演出します。

ここでやや話が脱線してしまいますが、J2では閃きのあるプレーや精度の高い攻撃は少ない気がします。その代わりに、大胆なミドルシュートやロングシュート、セットプレーでの細かなトリックプレーがたくさん見られます。

松本はこのあたりを駆使しながら戦っていましたが、今季前半戦は上手く噛み合わない部分があって下位に低迷していましたが、現在は自動昇格を視野に入れる順位まで上がってきています。

岡山も松本に似ていると思います。前線に大きな選手を置き、セットプレーからの得点、チーム全員のハードワークが攻守両面を支えています。

ここまで書いてきたように、同じフォーメーションでも求める点が守備を取って選んでいるのか、連動した攻撃をイメージして選んでいるのかで変わってきます。この点を理解してもらえたでしょうか。

フォーメーションには長所、短所が必ずあります。その中で日本人に合ったフォーメーション、チームに合ったフォーメーションを選択することで、選手本来が持っている力を発揮できます。

もちろんフォーメーションがすべてではありませんが、規則、ルールに近いものなので、それぞれのチームに与える影響は小さくないです。

フォーメーションが与える影響とはどういうものか。そういう視点でサッカーを観ていただけると、フォーメーションが変わったことでそれまでと別人のように活躍する選手や、試合の中でもフォーメーション変更があった途端、チームの息が吹き返す場面などに遭遇できるはずです。逆に、監督の判断ひとつでフォーメーションが変更され、チームを窮地に追い込んでしまうケースもあります。

今回は、3-4-2-1の形を中心に書かせていただきました。また違う視点からも書いてみようと思っていますので、次回以降も読んでいただけると嬉しいです。

<了>


橋本英郎

サッカーダイジェストWEBより転載
http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=30398

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